仏花は「祈り」や「記憶」の象徴
✿大切な人と、心でつながる花
お仏壇に手を合わせるとき、私たちは何を思っているのでしょう。
感謝、後悔、願い、報告……
そのすべてが、言葉では表せない「祈り」なのかもしれません。
そして、その祈りにそっと寄り添ってくれるのが「仏花」です。
お花は、ただそこにあるだけで心を静かに整えてくれます。
だからこそ、仏壇にお供えする花は、日々の“祈りのかたち”でもあり、
大切な人との“記憶をつなぐしるし”でもあるのだと思います。
仏花を選ぶとき、
「何が正しいか」ではなく、
「どんな風に思い出したいか」
を軸にしても良いのではないでしょうか。
明るくて朗らかな方だったら、少し柔らかいピンクを添えて。
静かで落ち着いた方だったら、深みのある青や紫で。
思い出の季節があるなら、その時期の花を取り入れてもいい。
プリザーブドフラワーなら、枯れることなく長く寄り添ってくれます。
埃が入りにくいボックス型や額装タイプなら、日々のお手入れも負担になりません。
なにより、色や形に「少し自由」があるからこそ、
その方だけの物語を、静かに表現することができます。
それは、“故人のための仏花”であると同時に、
“今を生きる人のための花”でもあるのです。
日々の祈りの中で、記憶は少しずつやさしいものに変わっていきます。
悲しみが薄れることはないけれど、
その人を思い出すたびに
少しあたたかい気持ちになれる。
そんな仏花をajugaはお届けしたいと思っています
プリザーブド仏花という、あたらしい選択
✿仏花は「こうでなくては」じゃなくていい
仏花と聞くと、決まりごとや伝統的なルールに従うべき…と思われる方も多いかもしれません。確かに、地域やご家庭によって「白い花」「左右対称」「菊が基本」など、さまざまな風習があります。
でも、故人を想い、手を合わせる。
その心に寄り添うお花が「こうでなければならない」なんて、少し窮屈だと思いませんか?
プリザーブドフラワーなら、季節に縛られず、色や形も自由に選ぶことができます。
例えば、その方が好きだった色、大切にしていた花、明るくやさしい印象の色合いでまとめることも可能です。
仏壇にふさわしい落ち着きは大切にしながらも、“その人らしさ”を表すお花で
「ありがとう」や「これからもそばにいてね」という気持ちを届ける。
それが、今の時代の新しい仏花の形だと私は思っています。
「こんなお花、仏花になるのかな?」
そんなご相談もよくいただきますが、答えはいつもひとつ。
あなたがその人を想って選んだ花なら、それがいちばんの仏花です。

こちらは紐のお線香をアレンジメントに差し込み火を灯さなくても薫る少し珍しい仏花です。
仏花に込められたエピソード
✿生きているうちに伝えられなかった想いを
私の祖母は、手先がとても器用で、いつも穏やかな笑顔を浮かべている、やさしい人でした。
お花が好きで、二階の窓から庭を眺めては「まぁ、きれいねぇ」と微笑み、咲いた花をそっと見つめる姿は、私にとって忘れられない風景です。
そして、もうひとつ。祖母は本当に食べることが大好きでした。お饅頭や果物、美味しいものを目の前にした時のあの嬉しそうな顔。思い出すだけで、微笑ましくなります。
祖母が、もう長くないだろうと言われ、食べられなくなってから、お土産に、一輪のバラの花を買って帰りました。
「ま〜、きれいねぇ…」と微笑んだ祖母。でもそのあと、「でも、食べ物がよかったな」と。
それが、祖母と交わした心に残る最後の会話。
祖母とのお別れは、言葉にならないほど悲しいものでした。
私は、祖母のやさしさにどこか甘えてしまっていたのだと思います。
思い通りにならないことに苛立ち、もどかしさをぶつけてしまうこともありました。
それでも祖母は、いつも黙って、まるごとの私を受け入れてくれていました。
どんな時も、変わらぬやさしさで。
そんな私のことを、祖母は時折、お友達に自慢するように話していたそうです。
「うちの孫はね、お花の仕事をしているのよ」って。
それを聞いて、私は思わず「もう、やめてよ」と反発してしまったこともあります。
だって、自慢なんてされるような孫じゃなかったから…。
今になって思います。
もっとやさしくしてあげればよかった。
もっと「ありがとう」を伝えればよかった、と。
せめてもの想いを込めて、私は祖母の好きだった紫の花で、仏花を作ることにしました。
選んだのは、生花ではなく、プリザーブドフラワー。
色あせず、枯れることなく、そっと咲き続けてくれる花。
いつも穏やかに、置かれた場所できれいに咲いていた祖母のように。
静かに、そしてやさしく、そこにいてくれるように。
「おばあちゃん、ごめんね」
「ありがとう、ずっと見守っていてね」
そんな言葉を胸の奥に添えて、仏壇にその花を飾りました。
そしてもう一つ。
「天国では思いっきり自慢してもいいよ」って。
「今はね、淡路島で小さなお花のお店までやるようになったのよ」って。
ようやく、まっすぐに伝えられました。
仏花には、「祈り」や「記憶」だけでなく、「赦し」や「感謝」も込められるのだと、私はこの出来事を通して知りました。
そしてそれは、亡き人に贈るだけでなく、今を生きる私たちの心にも、やさしくそっと花を咲かせてくれるものだと思います。


私が大切にしていること(作り手として)
✿花に添えるのは、あなたの想い
仏花を作るとき、私は「美しさ」だけでなく「そっと寄り添うこと」を何よりも大切にしています。
仏壇に手を合わせるその方が、少しでもあたたかな気持ちになれるように。
誰かを想う時間が、少しでも優しいものになるように。
そんな願いをこめながら、一つひとつ、静かに心を込めて作っています。
プリザーブドフラワーは、生花と違い長く咲き続けてくれる花。
その分、日々の空間に自然になじむ色合いや雰囲気、そして“飽きのこないやさしさ”を意識しています。
ご依頼いただく際、「好きな色はありますか?」「どんな方だったのですか?」と、少しだけお話をお聞きすることがあります。
それは、お花が語りかけるような仏花を作りたいから。
一方的にデザインを決めるのではなく、その方の物語の続きを、一緒に紡ぐように。
時には、ご家族が話してくれた故人の小さなエピソードから、色や花の種類を選ぶこともあります。
「生前は控えめな方だったから、派手なお花より、静かなトーンで」
「釣りが好きだったから、海を感じるようなアレンジに」
そんな小さな想いも、花で表現できたら・・・
それが、既製品では出来ない、特別なものだと私は思います。
仏花は、「哀しみ」だけではなく「祈り」や「感謝」「やさしい記憶」を伝えるもの。
だからこそ、その人らしさをそっと映し出す、静かでぬくもりあるアレンジを。
手を合わせるたび、どこかで微笑んでくれているような、一輪を届けたいと、いつも願っています。
おわりに
✿「お花を飾る」という行為は、心を整える小さな儀式
お花を飾るという行為は、
ただ「モノ」を置くこととは違って、
その人の心の中にある想いや、誰かへのやさしさ、
過去の記憶やこれからへの願いをそっとそばに置くような、そんな静かな時間だと思います。
日々に追われて、つい自分の気持ちを後回しにしてしまいがちな日常のなかで、
一輪でもお花を飾ってみると、不思議と呼吸が深くなったり、
小さな幸せを思い出させてくれたりします。
お花には「整える力」があります。
空間を、気持ちを、記憶を。
それはきっと、生きてきた時間や、大切な人とのつながりに
そっと寄り添ってくれるから。
プリザーブドフラワーであっても、それは変わりません。
長く咲き続けるその姿が、
「想いは、消えないものなんだよ」と、教えてくれるように思います。
ajugaでは、お花を贈ることも、飾ることも、
心を整える「小さな儀式」だと考えています。
特別な日だけじゃなくていいんです。
ほんの少し立ち止まって、自分のために、誰かのために。
そんな時間のそばに、私たちの花があったなら――。
それは、つくり手として、何よりのしあわせです。

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